年金制度における子育て支援策の現状を、整理しておきます。
日本の年金制度は、ご存じのとおり、自営業者や定年退職後の方が加入する「国民年金」と、サラリーマンが加入する「厚生年金」、そして公務員が加入する「共済年金」にわかれています。
保険料については、国民年金の場合は月々15,590円(平成27年度)、また厚生年金の場合は、2017年まで毎年一定割合で上昇予定の保険料率を被用者の賃金にかけて算出した金額を、会社と被用者が折半して払うことになっています。
国民年金においては、現状では残念ながら、子育て支援策は特に設けられていません。
厚生年金については、「3歳未満の子供」、すなわち加入者の子供が3歳になるまで、勤め先の育児休業制度にもとづく育児休暇(法で定められた育児休業+育児休業に準じる休業)を取得した場合、被保険者負担分と事業主負担分の保険料が「双方とも」免除されます。
子供が1歳になるまでなら、育児・介護休業法で定めた「育児休業」がありますから、この仕組みの恩恵を受けるには、勤め先の会社が1年を超える育児休業制度を独自に定めている必要があります。
なお産前産後の休業中については除かれ、この期間中は保険料の免除はありません。
この措置を使うためには、被保険者を使用する勤務先(事業主)が、社会保険事務所に申し出る必要があります。
この制度の狙いとして、社員が育児休暇を取りやすくするのを後押しすること、そして会社も保険料の負担分が免除されることから、育児休業制度を企業にもっと普及させようという意図があったようです。
復職後も育児によって短時間勤務が続き、給与(報酬)が減ってしまうという方のために、「標準報酬のみなし措置」という支援措置が設けられています。
「標準報酬」は、厚生年金の保険料を算出するための基準となる給与・賞与を指します。
復職後に給与が減った人は、対応して保険料も減るので支払い負担が軽くなりますが、これによって将来受け取るべき年金の額も下がってしまうはずです。
しかし子供が3歳になるまでは、育児のため現実に報酬が減ってしまった期間の報酬ではなく、子供が生まれる前の報酬をベースにして(育児中も、それ以前の賃金水準が続いているものとみなして)この標準報酬を計算してあげましょう、という措置です。
この措置により、この育児期間分について将来の年金額の減少を心配しなくてよいことになります。
この措置も上記の保険料免除のケースと同様に、被保険者を使用する勤務先(事業主)が、社会保険事務所に申し出る必要があります。
また、夫婦ともサラリーマン(厚生年金の加入者)という場合は、それぞれが制度の恩恵を受けられます。
社員としては、育児で会社を休んでいる間は、年金保険料の支払や将来の年金額の目減りを心配しなくてよいわけですが、現実的な問題は、子供が3歳になるまで育児休業をとらせてくれたり、短時間勤務を認めてくれたりする「社員に優しい企業」が、いまの日本にどれくらい存在するかです。
実際には出産のため退職を余儀なくされる事例のほうが多いでしょうから、制度の恩恵を受けられる層はかなり限られてくるはずです。
また3歳以降の育児については、年金制度上は、子育て支援という面では何も設けられていません。
したがって年金制度における子育て支援策は、実効性の乏しい現状にあると言わざるを得ないようです。